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為替デリバティブ取引の問題点

 

商品設計自体に問題がある

契約時の費用をゼロコストに設計

今回問題となっている通貨オプションの典型的パターンは,

中小企業側がドルコール円プットオプションを買い,
同時にドルプット円コールオプションを売る

                                           
という取引です。

通常,オプションを購入する際には,オプション料が必要となりますが,買い取引のオプション料支払いと売り取引のオプション料受け取りとを相殺してゼロコスト(顧客と銀行間の現実の支払いをゼロにすること)にしているので,中小企業側は契約時の費用負担がありません。
これにより,契約内容を吟味せず契約してしまった中小企業が多かったといわれています
 

②オプションの売り取引は損失が無限大の可能性

オプション取引には,「コール」「プット」「買い」「売り」という,合わせて4種類の取引があります。

このなかでもオプションの売り取引は,損失が無限大になる可能性があるので極めてリスクの高い商品です。
最判平成17年7月14日における才口千春補足意見は,オプションの売り取引の危険性について,以下のとおり明快に指摘します。


「オプション取引は,抽象的な権利の売買であって,その仕組みを理解することは容易ではなく,特にオプションの売り取引は,利益がオプション価格の範囲に限定される一方,損失が無限あるいは莫大になる危険性をはらむものであり,各種の証券取引の中で,最もリスクの高い取引の1つであるということができる。証券会社が顧客に対してこのようなオプションの売り取引を勧誘してこれを継続させるに当たっては,格別の配慮を要することは当然である。証券会社に求められる適合性の原則の要求水準も相当に高いものと解さなければならない。」


(2) ハイリスクな特約の存在

デリバティブ取引では,銀行が一方的に有利になるもの,又は中小企業等が一方的に不利になる等リスクの高い複雑な特約が多く見られます。
そのような特約には,以下のものがあります。

「ノックアウト条件」
ノックアウト価格という予め取り決めた価格に達した場合に契約が終了する特約。殆どは,中小企業等の利益及び銀行の損失が限定される価格に設定されており,中小企業等の損失及び銀行の利益が限定される価格には設定されていない。

「ギャップレート特約」
行使価格とは別に権利義務の発生を判定するための判定価格を設定した特約。為替レートが判定価格に達した途端に大きな損失が発生するのが特徴。

「レシオ特約」
コールオプションの買い取引の取引金額に対してプットオプションの売り取引の取引金額が,2倍・3倍等(この倍率を「レシオ」といいます。)に設定されるという特約。ドル高円安に進んだ場合に銀行側に生じる損失額に比べて,ドル安円高に進んだ場合に中小企業等側に生じる損失額は,レシオの倍率だけ多くなる。

 

(3) 中途解約の禁止

為替デリバティブ取引を中途解約すると,解約損害金の支払い義務が中小企業側に発生します
しかし,契約書をみると解約損害金の額については「別途当行が計算します。」「弊所所定の方法により算出します。」等と規定してあり,銀行側に計算が全面的に任されています。
顧客には,銀行の計算が合理的かつ公正な方法で行われているかどうかを検討する材料すら与えられていないのです


解約損害金の金額については,数千万円から数億円になる場合があり,それを理由に為替デリバティブ取引の解約を躊躇している顧客が多いのが現状です。

 

(4) 商品の説明不足

金融商品取引法40条1号は,「金融商品取引行為について,顧客の知識,経験,財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており,又は欠けることとなるおそれ」がないように,業務を行わなければならないと規定します(適合性の原則)。

為替デリバティブ取引で最も重要な説明事項は円高になったときの想定のはずです。
オプション取引において有名な公式「ブラックショールズモデル」を応用すれば,平成19年3月末日(1ドル118円台)時点で5年以内に1ドル80円に至る可能性は約30%もあったといわれています(佐藤哲寛「為替デリバティブ取引のトリック」29ページ)。
そのような重要事項を顧客が聞いていれば,当然顧客は契約しないでしょうから,金融機関が顧客にそのようなリスクを伝えていたとは,考えられません

 

(5)不適当な勧誘だった

 輸入を全くしていない,本来なら為替リスクを全く負っていない中小企業にも勧誘,販売されているケースがあります。


また,為替リスクを負っている中小企業であっても,為替リスクを負っている金額以上の購入させられているようなケースもあります(このようなケースを「オーバーヘッジ」といいます。)。


デリバティブについて詳しくはこちら

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